※漫画『キングダム』第10話「油断」のネタバレを含みます。
きんねぇさん
貂の後ろにいたムタを見て、前の話からずっと心配だったの。信が間に入ってくれて、まずはほっとしたわ。
ネコ軍師
うん。ところが、危険に気づいて駆けつけた信が、その相手を弱いと見てしまう。そこから流れが変わるんだ。
きんねぇさん
しかもムタは、怖い毒矢をわざわざ手放すのよね。どうしてそこまでするのかしら。
ネコ軍師
朱凶に吹き矢をどう見られていたかを聞くと、ムタが信と戦って何を示したいのかが見えてくるよ。
第10話の要点と基本情報
きんねぇさん
前の話の続きなのね。信たちはまだあのお屋敷のそばにいるの?
ネコ軍師
そうだよ。第9話で休んだ穆公の避暑地のそばで戦いが始まる。その途中で、別の場所にいる追跡隊にも視点が移るよ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 話数・サブタイトル | 第10話「油断」 |
| 収録巻 | 単行本第2巻 |
| 主な舞台 | 秦の穆公の隠れ避暑地と周辺の竹林、追跡隊が進む山中 |
| 主な登場人物 | 信、河了貂、政(嬴政)、ムタ、反乱軍の追跡隊 |
河了貂(かりょうてん)に忍び寄ったムタを前に、信は朱凶と比べて相手を弱いと判断します。ところがムタは毒矢の速さを見せたあと、さらに鉞(まさかり)でも信を追い詰めます。第10話で決着はつきません。信が剣で最初の一撃を受け止めてから、なぜその剣を手放すことになるのかが見どころです。
キングダム第10話「油断」のあらすじ
果実を摘む貂にムタが迫り、信が現れる
第9話の終わりに続き、貂は竹林で果実を摘んでいます。貂が考えているのは、政から聞いた山の民の話です。自分も山の民にあたるのか、一族はどうして山を下りたのか。祖父の言葉を思い出しかけますが、その背後には吹き矢を構えたムタがいます。
ムタの近くに何かが飛び込み、ムタが跳んでかわします。貂が驚くなか、石段の上に剣を持った信が現れます。その奥、建物のそばには政の姿も見えます。信は屋敷の外でムタと向かい合います。
山中で追跡隊が目印を見つける
場面は山中の反乱軍へ移ります。隊の兵は竹に残された目の模様と、急な斜面を下りた跡を見つけます。ムタがどんな人物かと問われた隊長は、楚よりさらに南の国の戦士だと話します。隊長が聞いた話では、かつて秦軍が楚を攻めたとき、南から来たムタたちと共に戦い、その働きが秦へ連れてこられるきっかけになったそうです。
やがて兵が次の目印を見つけますが、そこは崖の下です。隊長自身はムタが戦うところを見たことがないものの、人間離れした強さだという噂は何度も耳にしていました。隊長は兵たちをそのまま崖下へ進ませず、迂回を指示します。
信は朱凶と見比べ、ムタを弱いと判断する
避暑地のそばでは、ムタが頭巾をかぶった刺客を倒したのは信かと尋ねます。それを聞いた貂は、ムタも王弟側の刺客だと気づきます。一方、信の目には、ムタは小柄で剣も持っておらず、朱凶と対峙したときほどの圧力がありません。一瞬感じた妙な気配も気のせいだと考え、自分が勝てる相手だと言い切ります。
信は朱凶を仲間として討たれた怒りだと受け取りますが、ムタは朱凶が友人だったという見方を否定します。続けて吹き矢を放つと、矢は信のそばを通ります。ムタは信の体が目より先に反応したことを見て、信には武の才があると評します。信は毒矢の危険を知り、貂に家へ入るよう声をかけます。
ムタは吹き矢を手放し、鉞で信の背後を取る
ムタは、自分の吹き矢を朱凶が卑怯な武器と見ていたと明かします。ムタにとって吹き矢は、越のベッサ族に代々伝わる戦士の武器です。その武器を軽く見た朱凶を倒した信に対し、ムタは吹き矢を使わず、鉞で自分の強さを示すと宣言します。
武器を持ち替えたムタは一気に距離を詰めます。信は鉞を剣で受け、そこから反撃に移ろうとします。しかしムタはすでに回り込み、信の背後から体をぶつけます。信の手を離れた剣が地面へ落ちていくところで、第10話は終わります。

キングダム第10話「油断」の考察
信は最初から相手の危険を見落としていたのか
きんねぇさん
貂のところに駆けつけた時点では、信はちゃんと危ない相手だと思っていたように見えるわ。
ネコ軍師
最初から何も感じなかったわけじゃないよ。信は、対面したあとで自分が感じた違和感を打ち消しているんだ。
ムタは果実を摘む貂のすぐ背後まで来ていて、吹き矢を構えています。この状況で現れた信は、剣を手にムタと向かい合います。油断が表に出るのは、その場を見つけるまでよりも、向かい合ってから相手の力量を決めるところです。そこで信は体格や手にしている武器を見て、すでに知っている朱凶との違いを数えます。
朱凶との実戦は、信にとって相手の強さをはかる数少ない経験の一つです。経験を使うこと自体は自然でしょう。ただ、その比較で拾えるのは、朱凶に似た強さです。朱凶のような圧力を感じないことを、ムタに警戒すべきところがないという結論に結びつけた。私には、ここで信が自分の違和感を見直す機会を失ったように見えました。
追跡隊の迂回で、ムタの身のこなしが先に伝わる
きんねぇさん
追跡隊の場面、信とムタがにらみ合っている途中で入るのよね。あの崖が妙に気になったわ。
ネコ軍師
ムタの戦いを見たことがない隊長でも、その足取りは追える。目印の場所と兵の判断から、まず移動の差が分かるんだ。
信はムタを正面から見ています。一方、追跡隊はムタの姿を見ていません。兵が見つけるのは足跡や目印で、それでも、その人が通ったとみられる道を前に隊長は迂回を選びます。崖をムタが具体的にどう下りたかまでは描かれませんが、隊で進むには同じ道を選びにくいと分かる場面です。
この場面が信の判断より前に入るので、読者には先に、外見だけでは測れない情報が手渡されます。隊長は強さの噂を知っていても、自分では見たことがないと話す。その慎重な言い方と、信が対面だけで弱いと決める速さを並べると、お互いに持っている情報の違いが際立ちます。最後にムタが信の背後を取ると、山中で兵たちが驚いていた身軽さにも納得がいきます。
毒矢への反応に、信の強みと危うさが同時に出る
きんねぇさん
信はムタを甘く見ていたけれど、矢にはすぐ反応したのね。
ネコ軍師
そこはムタ自身が認めているね。頭で相手をどう評価したかと、体が何を感じ取ったかを分けて読むとおもしろいよ。
ムタが矢を放った場面で、信はその正体をすぐに言い当てられません。それでも、体は先に反応したとムタに見られています。信が矢の軌道を読み切って計画どおりにかわしたと考えるより、何が飛んできたかを把握するより早く危険を感じた場面として読むほうが、ムタの驚きにも合います。
信はその後、貂を屋内へ退かせようとします。毒があると分かったことで、信の注意は自分の勝ち負けだけでなく、近くにいる貂にも向きます。判断を誤っても、新しい事実が分かった瞬間に動けるのは信の良さです。ただ、一度の反応でつかんだのは吹き矢の危険までです。ムタの別の戦い方を知るには、まだ次の一手を見なければなりません。

ムタが吹き矢を捨てたのは、朱凶の敵討ちのため?
きんねぇさん
朱凶を倒した相手をわざわざ選ぶから、私も最初は敵討ちかと思ったわ。
ネコ軍師
ムタが話すのは、朱凶との友情より、自分の武器をどう扱われたかだね。そこを聞くと鉞を持つ理由が見えるよ。
朱凶が吹き矢を見下していたことに対し、ムタはその武器が一族に伝わるものだと説明します。彼にとって戦士の武器とは、敵を倒す働きがあるものです。朱凶から卑怯と見られたという話は、戦いの道具の好みだけでなく、何を戦士の力と認めるかの食い違いとして読めます。
そこでムタは、吹き矢を使わずに、朱凶を倒した信を打ち負かそうとします。信に勝てば、秦の人間が軽く見た武器に頼らずとも勝てると示せる、という理屈でしょう。ムタは信を倒す手段を自ら狭めていますが、その選択によって、ここで何を証明したいのかがはっきりします。武器を捨てたからといって、その武器や一族のやり方を恥じている様子はありません。むしろ、価値を説明し終えてから手を離す順番に、ムタのこだわりが出ています。
山の民を考える貂と、ベッサ族を語るムタ
きんねぇさん
戦いが始まると忘れそうになるけれど、貂はおじいちゃんのことを思い出しかけていたのよね。
ネコ軍師
うん。この回には、自分の一族について問いを持つ貂と、一族から受け継いだものを語るムタがいるよ。
貂は前話で聞いた山の民の話を、自分の暮らしに引き寄せて考えます。山から下りた一族のことは、本人にとってまだ分からないところがある。祖父の言葉を手がかりにしようとしても、目の前の危険に話を遮られます。
一方、ムタには、吹き矢を祖先から伝わる武器だと言い切れるだけのつながりがあります。第9話では、山の民が穆公の屋敷を手入れする行為が、代々残った関係を伝えていました。第10話では、ムタが日ごろ持ち歩く武器にも、受け継がれてきたものの重さがあります。貂の一族とムタの一族を同じと考える根拠はありませんが、誰から何を受け継いだかという視点で二つの場面を読むと、冒頭の貂の独り言も、対決の前置きだけでは終わらないと思いました。
剣で受けられたのに、なぜ信は剣を落としたのか
きんねぇさん
最初の鉞を受け止めたから、これなら信も押し返せると思ったの。次の瞬間には背中にいるなんて。
ネコ軍師
信は一撃を止めた。ムタはそこで足を止めなかった。その差が最後の数コマに出ているよ。
信は鉞が迫る速さに驚きますが、剣を合わせることには成功します。そのとき信も速さに自信を見せ、すぐに反撃しようとします。ところが、剣で受けた位置から反撃を考えるあいだに、相手はもう別の位置へ移っています。ムタが背後から体をぶつけ、剣が信の手を離れる。この順を追うと、武器同士をぶつけたときの力だけで起きたことではないと分かります。
表題の「油断」は、まず信がムタを弱いと決めつける場面に重なります。私は、最後に信が相手の速さを見たうえでなお、自分なら反撃できると思ったところまで含めて読みたいです。最初の油断が消えても、一度受けられたことで持てた自信に、別の落とし穴がある。相手を見直すのが一度では足りなかった、と感じる締めくくりでした。

よくある疑問
ムタは何者? 秦の出身?
作中では、越のベッサ族の戦士です。秦の出身ではありません。追跡隊長によると、秦軍が楚を攻めた際、南方から来たムタ側の軍と共に戦ったことがあり、そこでムタの働きが注目されたそうです。現在のムタは王弟側の刺客として政たちを追っています。
ムタは毒矢を一度も使わなかった?
信と向かい合ったあと、毒矢を一度放って危険を示します。その後、吹き矢を使わず強さを見せると宣言し、鉞に持ち替えます。貂の背後に立った最初の場面では吹き矢を構えていますが、そこで貂に命中する描写はありません。
第10話でムタと信の勝敗は決まる?
第10話の範囲では決まりません。ムタが信の背後を取り、信の剣が手から離れたところまでです。信が不利になったことと、戦いが終わったことは区別して読むと、次の話へつながる場面が分かりやすくなります。
漫画の第10話とアニメの第10話は同じ?
漫画の第10話は第2巻の「油断」です。TVアニメ第1シリーズの第10話は「王都突入」で、信たちが咸陽に着いた後を描きます。ムタが吹き矢を手放す場面を読み返すなら、漫画の第2巻で「油断」を探してください。
まとめ
第10話「油断」では、貂を助けに入った信が、朱凶を基準に新たな刺客ムタの強さを見誤ります。ムタは毒矢を見せたうえで吹き矢を手放し、鉞と身のこなしで信から剣を奪う形になります。信が一撃を受けられたからこそ、そのすぐ後に背後を取られる場面が効いていました。
前話から読み返すなら、貂が自分の一族を思い返すところと、ムタが一族に伝わる武器を説明するところにも注目してみてください。信にはその場で初めて見た相手でも、ムタには、武器の使い方も戦士としての考え方も育った場所から続いています。その違いが、竹林での短い対決に厚みを加えています。


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